「1年間日本一周、作品制作の旅」022 ステージ01青森秋田その13
到着した福浦の民宿は、旅館のような民宿でも、民宿のような旅館でもなく、親戚の「お宅」のような民宿。
このあたりには、漁師兼民宿という民宿がいくつもあるのだけれど、このあたりには観光名所として、仏ヶ浦があるくらいで、海水浴ができるわけでもないから、連休以外にはまとまったお客さんというのはいないのではないかと思ったりしたのだけれど、そのあたりについては、お部屋に入れてもらって、およそ納得がいった。
とりあえず、民宿前に道路に車を止めて、裏口のような玄関のドアを開ける。
網戸とスライドドアという構成なのだけれど、錆びついて、うまいこと開かない。
女将さんを呼ぶ声を出す必要もないくらいのかなりの軋みの音を発しながら、ようやく開けると、女将さんが出てくる。
名前を言って挨拶をして、車を置く場所を尋ねる。
指定された場所は、どう見ても通りを挟んだ隣の家の敷地で、そこにどう止めるのか分からない。
「どっち向きに止めるんですか?」
「どっちでも」
荒々しい北の海を漁場とする漁師の奥さんでもある女将さんからしたら、車をどっち向きで止めるのかなどと細かいことを気にするちっさい男だと思われているのかも知れないが、どう見てもそこは他人の敷地、一見さんのとくさんとしては、なるべく、人の迷惑にならないようにはしたいのである。
ひとまず車を正しく止めて、荷物を持って、裏口のような玄関に向かう。
後から分かったことだけれど、どうやら、そこは確かに玄関らしく、裏口は確かに裏口として存在していた。
玄関は、とても狭い。
とても狭いところにいろいろあって、壁にもいろいろ貼ってあるから、視覚的にもさらに狭くなっている。
玄関で靴を脱いだら、そのまま右わきにある階段で上に上がる。
急な階段。
小型のスーツケースを2つ持って、カメラが2台入ったナップサックを背負ってだとちょっと危ない。
今回は大丈夫だったが、何度かやってみると、そのうち、一度や二度は転げ落ちることになるのだろうと思う。
階段を上がった先には、3メートルほどの廊下が伸びていて、両側に2部屋ずつ振り分けられ、合計4室。
それぞれ、6畳程度なのだけれど、隣の部屋とはふすま一枚の関係なので、基本的には4部屋で使うというよりは、廊下を挟んで2部屋として使っているのだろう。
上がった部屋は、うん、ムッとする。
窓がしまっているせいで、空気が動いていない。
ちょっと肌寒いくらいの一日だったのだけれど、うん、それでも、嫌な感じ
木造の2階建ての屋根裏にこもった熱が層を作りながら、上から溜まっていく感じは、お盆に実家に帰ると感じるやつと同じだ。
それが、こんな北の果てで会えるなんて…と再会を喜ぶような代物ではない。
早速、自分たちの2部屋、隣の2部屋、廊下の窓を全開にして風を通す。
すでに加藤さんは、廊下に近い側に敷かれた布団で、ゴロゴロしている、いや、ゆっくりと腰を休めている。
さっきから、ちょっと気になっていることがある。
うん、何が気になっているのかというと、においだ。
先ほどまでは、それについては、さほど気にならなかったのだけれど、すんごく気になり始めたんだ、そのにおいが。
こういうこともあるのだろうか、硫黄泉のにおいは、遅れてやって来る。
「硫黄泉、やっぱ、硫黄泉だね~たまらんなぁ~!」
「硫黄泉は後から効いてきますからね~、ほどほどしてくださいよ~!」
ほとんど、飲み屋での先輩後輩の会話か、ゴールドジムの初心者とトレーナーの会話だ。
うん、知らんけど。
ともあれ、どう考えても、民宿入った直後よりも、部屋で窓を開けて回ったり、荷物を片付けたりしてた今の方が、なんだか、におっている。
なんか、汗をかいたら、中から出てきちゃった感じ。
あまり、においで迷惑をかけたことはないはずなので、ちょっと焦る。
一段落してGoProでも動かそうかと思ったところで、放送が鳴る。
この辺の下りは、動画の方で見ていただいた方が伝わりそうですので、そちらで。
においが気になるので、民宿のお風呂をいただくことにした。
お風呂も普通の民家のお風呂で、温泉ではない。
まあ、ちょっと改装した感じできれいなんだけれど。
「すみませんね~、孫のおもちゃが」
うん、確かにたくさんある。
ちょっと前のとくさんなら、こっそりとそれで遊んでいたかもしれないが、最近はしないのだ。
後で加藤さんが言ったことなのだけれど、「親戚のうちに泊まらせてもらってるみたい」というのが、まさにぴったり。
民宿には、民宿っぽさってあるけれど、この民宿には、親戚っぽさがある。
さて、お風呂の話の続きなのだけれど、脱衣所には、保温と給湯器を兼ねたような巨大な機械が置いてあって、直径が15センチくらいあるダクトのパイプ2本が壁をぶち破って外に出ている。
ロボコンが給湯器に改造されそうになって暴れた感じを想像してもらえれば分かるかもしれない。
それ以外は、至って普通。
このお風呂、加藤さんが入り、とくさんが入った後は、まあ、軽く硫黄臭と白濁していたかもしれないな。
大丈夫だったんだろうか。
しばらくすると、「夕食できましたので~」という声が、1階から階段を通して聞こえてくる。
時間は6時前なので、ちょっと早い。
早いというのは、「出来立てを食べてもらいたいので」というわけではなく、「出来ちゃったので」という感じ。
アラ汁の長ねぎは、火が通ってないから固いこと固いこと…。
うん、なので、伊豆の温泉民宿のレベルを経験しちゃっている方にはかなり厳しい。
やっぱり親戚のお宅に遊びに行った感じでした。
動画もご覧くださいませ
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