「1年間日本一周、作品制作の旅」034 ステージ02秋田岩手その5
先程までは曇りだったのだけれど、急に土砂降りになった。
これから、すんごい山道を上っていくことになるのに、すんごい土砂降りになっている。
50ミリを軽く超えるゲリラ豪雨のような状況。
最速にしても、ワイパーがまるで効かない。
いや、効いている。
無いよりは、ずっと効いているのだけれど、それでもまだ全然足りない。
あと2、3本、いや、もし、贅沢を言っていいのなら、追加で、5、6本のワイパーが欲しい。
ふと思ったのだけれど、このワイパーというやつは、ずっと昔から進化しない。
ちっとも進化しない。
到底、完成形だとは思えないのだけれど、進化しないのは何故だろう。
使用頻度は少なくないのに。
いずれにしても、このまま山道に入ってしまうとかなり危険なので、誰か、今すぐに新しいワイパーを発明してくれ。
時間は、10分程度で。
あと、予算ならない。
もう、思ってることを鍵括弧でくくるのを忘れるほどの半べそで走っていると、突然、雨が弱くなった。
ゲリラ豪雨の境目だ。
「助かった」
ただ、一旦弱くはなったのだけれど、山の天気は分からない。
今のうちに、少しでも夏油温泉に近づきたい。
夏油温泉に続く道は、手前の夏油温泉スキー場入口までは、走りやすくて安全な2車線。
そこから先、最後の6キロは、車線の無い、タイミグが悪いとどちらかがバックで戻るタイプの山道。
初めての道なので、晴れていてもちょっと嫌なのに、もしも、さっきみたいな土砂降りならば、すんごく嫌だ。
嫌っていうか、もう、無理だろう。
とりあえず、タイミングの悪いところで対向車と出会わないことを祈るしかない。
昼間でもライトの点灯が必要な山道を進み、ようやく慣れてきたころ、夏油温泉の建物と駐車場が見えてきた。
「温泉場としては、とても古いらしいのだけれど、昔の人は、どうやってここまで来ていたのだろうか」
他人の事を考えられるようになったのは、良くも悪くも、少し余裕が出てきた証拠。
そして、なんとか、『元湯夏油温泉』に到着。
時間は、午後4時。
午後3時で日帰り入浴は終了しているはずなので、ここにいるのは宿泊客とスタッフのみのはず。
駐車場に置かれた車の数もそう多くないので、これくらいなら、窮屈に感じるようなこともないだろう。
ただ、週末以外の旅だと時々発生する、「完全貸し切り状態」ではないのは、ちょっと残念なのだけれど。
もっとも、それは滅多にないご褒美のようなものだから仕方ない。
車はなるべく旅館の入り口に近いところに置き、ナップサックやらスーツケースやらを持って、チェックイン。
『元湯夏油温泉』という旅館は、秘湯。
秘湯だったりするとお風呂が混浴だったりするのだけれど、ここも然り。
日曜日からの宿泊で、さらにすんごい山の中なので変な人はいないはず。
で、温泉についての説明を受けると、何やらひたすら複雑。
露天風呂が4つあって、それが1時間くらいで女性専用になったり、戻ったり。
いずれにしても、うまいこと時間をずらしているので、これなら女性も、さほど不自由を感じることはなさそう。
そうそう、撮影禁止ですので、動画も写真もありません。
玄関横の階段を上った2階、ちょうど帳場の真上に位置する部屋に通されると、うん、古い。
玄関を入ったあたりで、薄々感じていたのだが、やっぱり古い。
でも、想定内。
早めに予約をしていたこともあって、駐車場側を見渡す、一番広い部屋。
この部屋に、2泊することになる。
元湯夏油は、「旅館」と言ってもすんごい古い湯治場に近い建物なので、「一番広い」と言ってもそこまで狭くないという程度。
ましてや、豪華など何処にもない。
当然、部屋には、トイレ、洗面、テレビに、冷蔵庫もない。
それから、もう一つ、電波もない。
とくさんたちは、「もはや、この世にテレビは要らない派」なので、テレビの有無については全く困らないし、電波がないのは、この旅にとって、むしろ、良い事だろうと感じていたのだが、夜になってその考えがちょっと変わることになる。
初日は、二組のシニアのご夫婦、その他がお二人いるだけだったので、混雑を感じることはなかった。
暗くなるころまでには、9個あるほとんどのお風呂をいただき、お部屋でのんびりする。
夕食の時間になると、お風呂が空くということもあり、その時間を確保するためにも、秘湯は素泊まりに限るという思想を持っている。
窓の外は、雨が降ったり止んだり。
それなりに強くもなったりしているので、距離もあり、階段を下る川沿いの露天風呂は、ちょっと危険。
外は暗いし、残り2か所のお風呂をいただいたら、早めに休むことにしよう。
すぐに眠れるものだと思っていた。
とても疲れているし、何より、昨日は、ほとんど眠っていない。
「ほとんど眠っていない」と言いながら5、6時間眠っている人がいるけれど、昨日のとくさんは、2時間も眠っていない。
ピークを知る、売れっ子芸能人並だ。
うん、これは、確かにほとんど眠っていないと言っていい領域だろう。
「ああ、やっぱり眠れない…」
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