再印刷【備忘録】

 先日発売した加藤さんの写真集『四畳半に花一輪』は、カラーとモノクロの混在する写真集。

これまでは、モノクロもカラーデータとして、4色での印刷をしていたのだけれど、改版を機会にモノクロの写真を黒のみで表現することにしてみた。

ちょうど、全ページモノクロのパリの写真集で色校を取るところだったので、同じ紙を使うこともあり、そのデータを『四畳半に花一輪』に流用することにした。

『流用』なんて言葉を使うと、手を抜いているように聞こえるのだけれど、そうではなくて、常に一定の印刷上りを求めるためには、作品をまたいでも同じ条件で出力した方がいいに決まっている。

ここでの『流用』とはそういう意味。

ということで、まず、パリの写真集の色校を取ってみたらすんごく黒が濃い。

加藤さんの上手い焼きが台無しになってシャドー側の暗い部分が真っ黒になってしまっている。

その写真は、暗いのであって、黒いのではないのだ。

今回の出力結果に合わせて、写真データの方を調整する。

まずは、印刷結果に合わせてモニターを暗くして、シャドー部分が黒つぶれするようにする。

そこから、データの中間調の明度を上げていき、本来狙っている明るさになるところで停止。

そして、別名で保存。

その数値を他の写真にも移植していく。

改めて、色校を取ってみるとバッチリ狙い通りの色になっている。


そのデータで調整したパリ写真集を本番の印刷に回す。

その後、『四畳半に花一輪』のモノクロ部分の画像データをパリで出力した色校に合わせた数値で修正を行う。

元の写真の濃度の傾向は変わらないので、同じ紙を使っている以上、印刷の状態は同じになるはず。

まず最初に届いたのは、一日早く入稿したパリの写真集。

表紙の色味は想定通り。

しかしながら、中身については、許容の範囲ではあるものの、色校よりも少し黒が引けている。

パリの写真なので、逆にビンテージプリントっぽくなってると言えなくもない。


翌日、『四畳半に花一輪』の新版が到着する。

箱を開けて愕然。

表紙の印刷は白けていて、黒くあるべきところがグレー。

よく言ってもチャコールグレー止まり。

中身は、モノクロは黒が浅く、カラーは掠れている。

とりあえず、この時点での判断としては、「インクが乗っていない」

恐らく、「吐出ノズルの目詰まりだろう」と。


コールセンターに連絡を入れて調査を依頼するが、調査の結果は、インクの吐出に問題はなく、「紙の銘柄が変わったのが原因であって、基準範囲内なので再印刷はできない」とのこと。

まあ、冷静に激怒しながら、論点を整理して、ロジックを組み立てる。

「こちらがオーダーしたのは、前回と同じ紙なのだが」

「マットコート紙の銘柄が変わりまして、凹凸の強いものになっています」

「へ?同じ名前なのに銘柄が変わって?で、新しいマットコート紙に凹凸強くがあるものを採用したので、深めの凹にはインクは入らないのでその部分のは白くなってしまい、色の濃い写真では特に目立ちますが、基準内?何それ?なんでそれを伝達してないの?」

少なくとも、事前に配られている紙見本では、写真向き!ってしっかり書いてあるし、パリの写真集では、本番前に使用紙に関する確認で電話をしてきたのに、一番大事なことは伝達してない。

しかも、事前に2回の色見本を取って調整をしているにもかかわらず、本番では紙をこっそり変えちゃったって…。

すんごくよく見ると、確かにテクスチャが違う、ちょっと深い。

パリの写真集も、色校と同じ紙で出力をしたはずなのに、比べるとちょっと深めの凹凸がある。

モノクロのパリの写真集は、写真データに粒状性があるので、そのカスレは点としては見えないのだけれど実際には存在しているようで、幾分黒が浅くなっているのは、そのせいらしい。

今回の仕上がりで、再印刷を要求するべき問題にしていたのは、そのモノクロ部分よりも、カラー部分のカスレ。

これは、全体に出るわけではなくて、黒のトナーが乗っている暗い部分にほこりのように白い点が発生している。

この事象が発生した経緯について、事細かにCSの方と話し合い、交渉の末、再印刷の対応となった。

ただし、改めて同じ現象が出ることを避けるために、コート紙での出力を提案、了承された。

重さは同じでも、紙は薄くなり、写真集としてのボリュームは落ちる。

しかしながら、平面性は高いということなので、この事象は発生しないという。

それから、二日後、今度こそ大丈夫だと思えども、心配をしながらの開封。

これまでで一番の見事な仕上がり。

想定以上に写真集の厚さは減っていたものの、印刷のクオリティは、これ以上は求められない、この機械としては恐らく最高の品質。

表紙についても、黒が足りなくてグレーっぽかったのはしっかりと締まり、良い感じに。

だが、急に意味が解らなくなった。

『何で、何もいじってないはずの表紙の色がこんなに良くなったんだ???』


ここで、「やはり全体を通して黒の吐出量が足りなかったのではないか?」という疑問が生じた。

つまり、「機械が壊れてんじゃないの???」ということ。

余りにしつこい質問でさすがにこちらも嫌になってしまったのだけれど、お礼がてらの連絡を再度入れてみる。

中身は非常に良好な上がりになった旨のお礼と、新旧2点の表紙を比べた写真を送付。

再度、調査をしてもらったところ、現場が「求めている上りは恐らくこうだろう」と、黒の締まりを調整をしたとのこと。

「へ?」

もう意味不明の行方不明、行き違いのすれ違い、昔の月9ドラマみたいになってる。

最終的にはそれでよかったんだけど、そこを動いちゃダメじゃん。

そこに行こうとしてんだから、待ってなきゃダメじゃん。

外雨降ってんのに、傘持ってないんだから、そこで待ってなきゃダメじゃん。

まあそんな感じのごたごたがありまして、改めて次からも0ベースで写真集を作るってことになりました。


経緯のフローチャートはこんな。


色校を取る

黒がつぶれている

データを修正して、二校を取る

最高の上り

パリ本番   →   四畳半本番(データ流用)

↓          ↓

【OK】       表紙、中身のカラー、モノクロに問題発生

  ----------          

                               ↓

                          ↓                      →

                            ↓                             ↓

表紙が白い       カラーがほこりっぽい     モノクロが浅い

                            ↓                             ↓

 →                  黒の吐出量が足りない??    

                                ↓

                            問い合わせ

                        ↓

                紙の種類が変わったので、仕方ない。 

                                ↓

            色校後の無連絡での紙の変更の責任を指摘

                                ↓

                     紙を変更しての再印刷

                                ↓

                            到着、開封

                                ↓

                         最高の仕上がり

                                 ↓

   紙を変えていない表紙の状況も締まって良くなった理由が不明

                                 ↓

         再度問い合わせ

                                 ↓

                               調査

                                 ↓

    「現場が独自の判断で、機械の設定を変更。修正をした」

                                 ↓

                             カオス

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